不幸なことに戦争や拉致、行方不明などにより死体が確認できず、不在の人がいる場合があります。生死がはっきりしないことにより相続手続きに支障が出るなど、手続きに影響してしまうことがあります。
いったんその者を死亡したとみなし、その者の法律関係をはっきりさせる制度が失踪宣告です。
失踪宣告
失踪宣告には2種類あります。普通失踪と特別失踪です。特別失踪は船舶の沈没や戦争、地震、火災、噴火、津波などにより行方不明であるケースで、普通失踪は特別失踪に該当しないケースとなります。
普通失踪の場合は失踪してから7年間、特別失踪の場合は地震などの危難に遭遇してその危難が終わって1年間たっても生死が明らかでない場合、失踪宣告の申立が可能です
民法30条(失踪の宣告)
- 不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。
- 戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないときも、前項と同様とする。
民法31条(失踪の宣告の効力)
前条第一項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第二項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。
失踪宣告の手順
失踪宣告は主にこの手順で行います。概ね全て終了するのに半年以上かかります。
- 裁判所へ申立
- 審理
- 公示催告
- 失踪の宣告
- 結果の連絡
- 失踪届の提出
- 戸籍の変更
家庭裁判所で失踪宣告が認められても戸籍に自動的に登録されるわけではないので失踪宣告の結果が出たら市区町村へ失踪届を出して戸籍を変えに行く必要があります。
失踪宣告をするのに必要な書類
- 申立書 1通(収入印紙800円)
- 不在者の戸籍謄本 1通
- 不在者の戸籍附票 1通
- 不在を証する資料(不在者の捜索願受理証明書、返戻された不在者宛ての手紙等)
- 申立人の利害関係を証する資料(親族関係であれば戸籍謄本全部事項証明書)
失踪宣告の取り消し
失踪宣告を出したけれど、生き延びていて奇跡的に見つかるケースもあります。この場合失踪宣告を取り消す必要があります。
この場合失踪宣告をされた本人もしくはその利害関係者が家庭裁判所で失踪宣告の取り消しを行います。失踪宣告の取り消しが認められれば法律上死亡していなかったことになり相続の権利などは復活します。
遺産分割協議後に失踪宣告をされた人が現れた場合、遺産分割協議自体は取り消すことができませんが、残っている財産の範囲内で返したりする必要があります。