相続が始まり単純承認され、かつ遺言がない場合、遺産の管理は共同相続人が共同で遺産分割終了まで管理します。共同相続人は相続人全員の合意により委任契約で遺産管理人を選任することができます。
遺産管理人という職務はないため、民法の委任契約に准ずるものと考えられています。今回は遺産管理人の役割や権利義務などを解説していきます。遺産管理人の役割は簡単に説明すると、遺産分割が終了するまで遺産を適切に管理する人のことです。
契約の成立
遺産管理人は相続人との委任契約によって選任されます。相続人が複数いる場合、遺産は共有となるため管理契約について、相続分の過半数をもつ共同相続人だけで契約が成立するとも考えられるが、与える影響が大きいため民法251条の相続人全員の合意より、相続人全員で行う必要があるものと考えられます。
遺産管理人の地位と仕事
遺産管理人は、相続人の代理人となります。共同相続人は委任をしたとしても自らの管理権がなくなるわけではないので委任した事項以外の管理は可能です。当然遺産管理人の管理を妨害するようなことはしてはなりません。
なお契約の解除についてですが、これもいつでも行うことができますが相続人全員の合意が必要と考えられております。
遺産管理人が行う業務ですが、基本的には委任契約に記載されたことを行います。一番メインとなるのが相続財産の収集と把握です。被相続人が一人暮らしの場合、どこに遺産があるかなどなかなかわかりません。まずはそれを探すところから始まります。
遺産管理人の義務
堅苦しいですが遺産管理人は委任契約により成立するため、当然法的な義務が生じます。簡単にまとめると、善管注意義務、報告義務、受け取り物の引渡義務です。当たり前といえば当たり前ですが遺産を整理するにあたって、勝手に遺産の一部を持ち出して逃げたりしてはいけません。遺産管理人に資格はありませんが被相続人や相続人がある程度信頼できる人物でなければ、トラブルの原因になります。探すのが難しい場合などは相続のプロである司法書士や弁護士などを選任することもできます。
以下が根拠となる民法の委任契約に関する義務の条文です。
- 第644条(受任者の注意義務)
- 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
- 第645条(受任者による報告)
- 受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。
- 第646条(受任者による受取物の引渡し等)
- 受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければならない。その収取した果実についても、同様とする。
- 受任者は、委任者のために自己の名で取得した権利を委任者に移転しなければならない。
なお基本的には保存、保管義務ですが、家庭裁判所の許可が下りれば、不動産の売却や家電の処分など処分行為も可能となります。