当然ですが相続は自然人の死亡によって発生します。現行の法律制度では相続は死亡によってのみ発生します。相続人は法律で定められており、遺言がある場合は遺言が優先されます。遺言がない場合は民法が各相続人に対しどれくらいの分配するのかを定めています。これを法定相続と言います。
相続が始まったらまず最初に相続人の特定をいたします。なぜなら民法の規定によって遺産分割協議をするには相続人になったもの全員が参加しなければならないからです。相続人の一部しか参加しなかった遺産分割協議は無効になります。いかなる場合でも、相続の基本は法定相続です。
戸籍の収集
相続人の特定は戸籍の収集から始めます。ほとんどの場合は複数の戸籍を用意し相続人を特定します。(相続において1枚の戸籍のみで出生から死亡までの記録を確認できるのは稀なケースであり、通常は複数あります。)兄弟姉妹が多いケースや家族関係が複雑なケースは戸籍集めとその確認が相続手続きの中で一番大変な場合もございます。
法定相続情報証明制度
戸籍を全て集めたら、それを元に相続手続きを進めます。しかし相続人が複数いる場合、銀行などに戸籍の束を毎回持っていったら大変です。法定相続情報証明制度は、このような収集した戸籍の束を相続人が作成した法定相続情報一覧図と一緒に法務局に提出すれば法務局がその戸籍を確認し法務局の認証文を付した「法定相続情報一覧図の写し(戸籍の内容に虚偽などがなく間違い、法務局お墨付きの証明)」を交付してくれます。
この法定相続情報証明制度により相続人は金融機関等に法務局から交付される一覧図の写しを渡せば戸籍の束を渡す必要がなくなります。これにより金融機関等も戸籍の内容が本当に正しいかを調べる必要がなくなり大幅に時間の短縮ができます。
法定相続情報証明制度は強制制度ではございません。相続人がこの制度を利用するか否かを決めることができます。制度を活用したい場合は法務局の登記所に自ら用意した戸籍とそれをもとに作成した法定相続情報一覧図を持っていき申出します。法務局は全国にありますが、管轄の法務局に行く必要がございます。申出をすると法務局の職員が内容を確認して法定相続情報一覧図の写しを交付してくれます。
注意すべき点はあくまでも法務局は戸籍などの内容を確認して一覧図を発行してくれるのみです。ある程度は相続人自身が行わなくてはいけません。法定相続情報証明制度はH29年5月29日からスタートしました。そのため比較的新しい制度です。金融機関や保険会社によっては法定相続情報証明制度による一覧表では取り扱ってくれない場合もございます。他にも一覧図には相続放棄や遺産分割の有無などの情報は戸籍から読み取ることができないため一覧図の写しには記載されません。したがって金融機関等によっては追加書類の提出が求められる場合があります。全てが万能な状況ではないことに注意しましょう。