相続人は熟慮期間内に相続放棄や限定承認をすることが可能です。相続放棄する場合は民法の定めにより初めから相続人とならなかったものとみなすとされています。
また遺産分割協議の結果、遺産をほかの相続人が取得した場合も遺産の分割は相続開始の時に遡ってその効力を生ずると民法で定められております。
したがって相続放棄や遺産分割の結果によっては当該遺産について相続開始の時から何の権利義務を有していなかったことになる可能性もございます。(遺産の帰属が不明確な期間が存在する)
法律上の取り扱い
ドイツ民法では熟慮期間中の相続人は遺産を管理する義務は負わず管理した場合には事務管理が成立すると規定しています。
一方日本の民法では、相続人が管理義務を負うとする一方で当該財産を取得しないことになる可能性(相続放棄等)があることを考慮して相続人はその固有財産における同一の注意(自分の財産に対する注意義務を持って行えば良い。)をもって相続財産を管理しなければならないと規定し、善良なる管理者の注意義務までは認めておりません。
相続放棄をした場合、初めから相続人とならなかったものとみなすと規定されているので、相続財産の管理義務を負わないように思えます。
しかし相続放棄をしたものが相続財産を放置してしまえば、相続財産が無くなったり毀損したりトラブルになる可能性があります。そのため民法では相続の放棄をしたものはその放棄によって相続人となったものが相続財産の管理を始めることができるまで事故の財産におけるのと同一の注意を持ってその財産の管理を継続しなければならないと規定しました。
その放棄によって相続人となったものの意味ですが、判決では共同相続の場合に放棄しなかった他の相続人も含むとされています。
全員が相続放棄した場合
では相続人全員が放棄してしまった場合はどうなるのでしょうか?基本できに第一順位の相続人が相続放棄をした場合、第二順位の相続人がいれば、その人が相続人となります。しかし最終順位の相続人が放棄した場合、次の順位となる相続人がいないため、次順位の相続人が管理するというわけにはいきません。
不動産のように管理が必須である相続財産が残された場合どのようにするのでしょうか?このような場合相続財産管理人選任の申し立てをして相続財産管理人に管理を引き継ぐ以外相続財産の管理義務を免れる方法はありません。
相続財産管理人の選任申し立てに際し、手続き費用を相続財産から支払うことが難しい場合、申立人が予納する必要があります。とくに全員が相続放棄する案件の場合は、相続財産から手続き費用を支払うことは難しいでしょう。そのため相続財産管理人専任の申し立ての手続き費用は負担する必要があります。
無論、被相続人の抵当権者などの利害関係者が申し立てをする場合もございます。