任意後見契約や遺言と同時に公正証書役場で「死後事務委任契約」を結ぶ場合があります。死後事務委任契約とは簡単にいうと亡くなった後にお願いする手続きを生前に取り決めておく契約のことです。依頼主を委任者、依頼を受ける側を受任者と言います。今回はその死後事務委任契約の解約・解除について解説いたします。
死後事務委任契約は解約できる?
死後事務委任契約は準委任契約ですので、原則として相続が発生する前に受任者、委任者ともにどちらからも契約を解除することができます。また合意による中途解約も可能です。ただし、民法651条は任意規定のため、解除する権利を制限することもできます。
(委任の解除)
- 第651条
- 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
- 前項の規定により委任の解除をした者は、次に掲げる場合には、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
- 一 相手方に不利な時期に委任を解除したとき。
- 二 委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したとき。
解除しようとしたときに、認知症等で委任者の判断能力がない場合は、委任者に青年後見人をつける必要があります。一方受任者が判断能力を失った場合、後見制度等の対象になれば当然終了となります。
受任者の数には制限がないため、2人以上いる場合もありますが、片方だけが辞めると言ったことも可能です。過去の判例においても解除権は認められているものが多いです。死後事務委任契約は委任者と受任者の間の信頼関係で成立しているので、受任者側からいつでも解除できるとすると、委任者にとって不都合が起きる可能性もございますのでやむを得ない場合の理由等を限定しておく必要があります。
委任者が相続発生前に認知症などで判断能力に欠けた場合、受任者は契約の解除をすることができません。
受任者としては、委任者に成年後見人が選任されていない場合は、選任してもらい、その成年後見人に対して契約解除の意思表示をすることとなります。ただし成年後見人の選任申立権者は、本人、配偶者等近しい人に限られるため、受任者が成年後見人選任の申し立てを行うには任意後見契約と死後事務委任契約を同時に結び登記をしておくことも手の一つです。
受任者が履行困難になった場合
先ほど述べたように受任者が成年後見制度の保護に入れば自動的に契約終了ですが、受任者が履行が著しくできない場合もあります。この場合、契約は継続するも意味がなさなくなってしまいます。このような場合、後任の選定や再契約に時間がかかるためあらかじめ予備的受任者などを設定しておくといいいでしょう。